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テキストデータ
伊吹山は山頂の野草、麓の薬草と自然との共生をはたしてきた山であったが、1952年からセメント工場の採掘により、露出された無惨な岩肌をさらすまでに至った。2003年に操業を停止するものの、キズ跡は早急に回復しない。
この無惨な岩肌を、ここに訪れる人々による自発的「参加」によって再生する。山の内部には採掘の傷跡として縦坑と水平抗が残され、坑道内部はベルトコンベアとして使われていた。この産業廃虚である坑道は、再生に向けた希望の光を灯すべく塔として転用する。この塔は縦坑と水平抗が交差する部分に6本の塔として形態化される。
破壊された自然は訪れる人々の手によって緑化を進めるが、最も激しく荒れた斜面は未来に伝える遺産とし、やがて、歴史の象徴である荒れた斜面と光塔を残し全てが森に覆われる。
訪れる人の、自然再生への願いのエネルギーの総体が、施設総体のあり方のエネルギーを上回った時に、伊吹山はあるべき山の姿を取り戻す。