タクタク一級建築士事務所 滋賀県・京都府の建築設計事務所/建築家 滋賀・京都で建築家と建てる家

テキストデータ

伊吹山は山頂の野草、麓の薬草と自然との共生をはたしてきた山であったが、1952年からセメント工場の採掘により、露出された無惨な岩肌をさらすまでに至った。2003年に操業を停止するものの、キズ跡は早急に回復しない。


この無惨な岩肌を、ここに訪れる人々による自発的「参加」によって再生する。山の内部には採掘の傷跡として縦坑と水平抗が残され、坑道内部はベルトコンベアとして使われていた。この産業廃虚である坑道は、再生に向けた希望の光を灯すべく塔として転用する。この塔は縦坑と水平抗が交差する部分に6本の塔として形態化される。


破壊された自然は訪れる人々の手によって緑化を進めるが、最も激しく荒れた斜面は未来に伝える遺産とし、やがて、歴史の象徴である荒れた斜面と光塔を残し全てが森に覆われる。


訪れる人の、自然再生への願いのエネルギーの総体が、施設総体のあり方のエネルギーを上回った時に、伊吹山はあるべき山の姿を取り戻す。

JIA(日本建築家協会)
全国卒業設計コンクール2004


掲載P34
出版:(社)日本建築家協会